皆さん、先日新聞で「デジタル遺言」制度について触れられていました。政府が遺言制度の普及のため創設を検討しているというものです。 <デジタル遺言制度とは> デジタル遺言制度とは、法的効力のある遺言書をインターネット上で作成・保管できる制度です。インターネット上で作成が可能になれば、フォーマットに沿って入力することができ、遺言制度に詳しくない人でも自分で作成しやすくなります。紙の遺言書と違い紛失リスクがなく、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使えば改ざんもされにくいです。利便性が高まれば、制度利用者の裾野が広がります。 <遺言書とは> 相続が発生した場合に被相続人の遺産分割への意志を表すものが遺言書です。相続割合は法定相続分より遺言書が優先されますが、遺留分侵害請求権には注意が必要です。遺留分侵害請求権とは、民法に規定されている最低限の遺産を受取る権利を侵害している者に対し侵害額に相当する金銭を請求できる権利です。遺言書の普通様式には、1自筆証書遺言、2公正証書遺言、3秘密証書遺言、の3形態があります。 <1.自筆証書遺言> 自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文を手書きし、日付を記して署名・押印した遺言です。2018年の民法改正により、財産目録部分についてはパソコンなどで作成ができます。メリットは、第三者へ依頼しなくても遺言書が作成できる点で、自宅で保管することも法務局の補完制度を利用することもできます。デメリットは、紛失や隠ぺいのリスクがあり、内容に不備があった場合は無効になってしまいます。 <2.公正証書遺言> 公正証書遺言とは、公証役場にて2人以上の証人立会いの下、遺言者が口述した遺言内容を公証人が筆記して作成するものです。メリットは、法的に有効な遺言書を作成でき、公証役場で保管されるので紛失や隠ぺいの心配がないことです。デメリットは、費用と手間がかかり、事前に公証役場に申請し、公証人を2人以上用意する必要があります。公正証書作成手数料は1000万円を超え3000万円以下で2万3000円、この他に財産が1億円未満の場合は遺言手数料1万1000円が必要です。 <3.秘密証書遺言> 秘密証書遺言とは、遺言者が作成して署名・押印した上で封印し、公証役場で公証人や証人立会いの下、本人が書いた遺言であることを証明してもらうものです。メリットは、遺言の内容を事前に知られずに、パソコンで作成したり、第三者に代筆させたりしても大丈夫という点です。デメリットは、公証役場に保管してもらえず紛失や隠ぺいのリスクがある点です。遺言の内容は公証役場で確認しないので、不備があった場合には遺言書が無効になってしまいます。 <遺言についての留意点> 遺言は相続に関する意思表示として重要ですが、心情にも財産価格にも変化が生じることには注意が必要です。なお、遺言書は方式が変わったとしても、最後のものが有効となります。 以上
